【続報】アジア大会の国際映像は中国共産党宣伝部門の系列企業へ 51.6億円契約を一次資料で検証する

気になる出来事

Oct4.2026・矢又小次郎

前稿「愛知県大村県政15年に異議!絶対的権力は腐る!」の続報である。

大村秀章知事が会長を務める愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会は、大会の国際映像を制作するホスト放送局の業務を、中国中央広播電視総台(ジョンヤン・グアンボー・ディエンシー・ゾンタイ、CMG)系の「CMG-IMP」に、税込5,156,921,572円で委託した。契約方式は指名競争入札である。いずれも組織委員会が自ら公表した資料で確認できる。

CMGは、中国共産党中央宣伝部と国務院が所有する国営メディアグループである。

本稿は、中国企業が国際大会に加わること自体を問題にするものではない。問うのは、一度決まった契約がなぜ解除され、なぜ指名競争という限られた方式で、なぜ当初のほぼ2倍の金額で、党の宣伝部門の系列企業に決まったのか。そして、そのことを誰が問うたのか、である。

何が起きたか――契約の経緯

時期出来事根拠
2025年9月16日CMG-IMPと契約。契約種別は指名競争入札、契約金額は5,156,921,572円(税込)組織委員会「契約状況の公表」
2025年9月3日第48回理事会で、ホスト放送局委託契約を承認組織委員会の理事会開催通知、中日新聞
2025年7月29日大村会長が会見で「協議が調わなかった」と説明共同通信
2025年7月28日第46回理事会で、現契約の解除と新たな受託者の選定を決定組織委員会の理事会資料
2025年6月10日ISBHAOと契約を締結中日新聞
2025年4月2日開札。スペインのInternational Sports Broadcasting Companyと中国のYahao Sports Culture Media(雅豪体育文化伝媒、ヤーハオ・ティーユー・ウェンホア・チュアンメイ)の共同体「ISBHAO」が、税込2,618,888,800円で落札組織委員会の理事会資料

当初の契約額と再契約の額の差は、25億3803万2772円、率にして約96.9%に達する。

契約の担当は、組織委員会の広報メディア課プロダクショングループと公表されている。

委託先CMG-IMPとは何者か

OCA(アジア・オリンピック評議会)は、上海を拠点とするCMG-IMP(China Media Group-International Media Port)が、組織委員会に選任され、OCAの承認を受けたホスト放送局であると公表している。

中国側の報道によれば、その運営会社は「国際伝媒港(上海)文化発展有限公司」(グオジー・チュアンメイガン〈シャンハイ〉・ウェンホア・ファージャン・ヨウシエンゴンスー)である。愛知・名古屋大会は、同社が初めて総台(CMG)を代表して海外の大型総合競技大会の放送を引き受ける案件だという。同社の董事長兼総経理は、CCTVの子会社である中国国際電視総公司(ジョングオ・グオジー・ディエンシー・ゾンゴンスー)の副総経理を兼ねている。体制には、CMGとその系列会社、23の省・市のテレビ局、複数の民間機関が参加している。

親会社のCMGは、2018年の機構改革で設立された持株会社で、その所有者は中国共産党中央宣伝部と国務院である。CMGのトップは中央宣伝部の副部長を兼ねる。

映像の制作体制にも特徴がある。上海に遠隔制作の拠点が設けられ、名古屋の国際放送センターと上海の拠点が協力してコンテンツを制作する。中国のメディアは、この受注について、信号制作の源を握ることで国際的な発言力を高められると論じている。

OCAの公表として報じられた数字では、放送関係者6,571人のうち、ホスト放送局の関係者は3,858人にのぼる。会場で多く見かけるとされる中国人スタッフの多くは、この放送体制の要員と考えられる。

何が問題か

一般競争から指名競争へ

最初の入札は、誰でも参加できる一般競争入札だった。中日新聞によれば、4つのグループが参加している。ところが再入札は、発注者が相手を選んで競わせる指名競争入札に変わった。どの事業者が指名され、何社が応じたのか。最初の入札に参加していた他の事業者は指名されたのか。公表資料からは分からない。

費用はほぼ2倍に

契約額は約26.2億円から約51.6億円へ、25億円余り増えた。日程が迫る中での再調達で費用が上がること自体は起こりうる。しかし、増額分の妥当性をどう判断したのかは説明されていない。組織委員会の運営費には、県と名古屋市の公費が投じられている。

映像とデータが上海を経由する

大会の映像は、上海の拠点と連携して制作されている。国の安全保障方針が通信・情報分野で中国企業への依存に慎重な姿勢を取る中で、党の宣伝部門の系列企業に、大会の国際映像の制作という中核業務を委ねることについて、組織委員会が情報管理や安全保障の観点から審査を行ったかどうかは、公表されていない。

会長は知事、議会は問わず

組織委員会の会長は大村知事である。前稿で示したとおり、2025年2月から2026年8月までの7回の定例議会で、本会議の質問項目にホスト放送局の委託が立ったことは一度もない。県民の代表である議会が問わない以上、県民自身が問うしかない。

公平のために

批判を正確なものにするため、組織委員会に有利な事実も記しておく。

  • 解除の原因は当初の受注者側にあった。 中日新聞は、契約後に提出すべき書類の一部が出されず、業務の見通しが立たなかったと報じている。組織委員会が意図的に契約を壊したことを示す資料はない。
  • 当初の落札者にも中国企業が加わっていた。 ISBHAOはスペイン企業と中国企業の共同体だった。ただし、その中国企業(Yahao Sports Culture Media)とCMGは別の組織である。
  • ホスト放送局はOCAの承認を受けている。 選任は組織委員会だが、国際大会の主催者であるOCAが承認している。

また、ネット上で広がった主張のうち、次のものは事実と異なるか、裏付けがない。

主張評価
開催国以外の企業がホスト放送局を務めるのは史上初誤り。2018年ジャカルタ大会では、スイスとロンドンの企業の共同事業が務めた
国内の入札が不調で中国企業に回った誤り。最初の入札では4グループが参加し、落札者が決まっている
日本企業を排除するために条件を設けた裏付けなし。参加資格は厳しかったが、排除の意図を示す資料はない
CMG系は最初の入札にも参加していた未確認。二次資料の間で記述が食い違っており、一次資料で確認できていない

なお、中日新聞は再入札の落札者を「中国メディアなどの共同体」と報じたが、組織委員会の公表資料では、契約の相手方は「CMG-IMP」とのみ記されている。

組織委員会と大村会長に問う

一県民として、組織委員会と大村会長に次の点の説明を求める。

  1. 再入札を指名競争とした理由は何か。どの事業者を指名し、何社が応じたのか。最初の入札に参加した他の事業者は指名されたのか。
  2. 契約額が当初のほぼ2倍となった理由と、その妥当性をどう判断したのか。
  3. 大会の映像が上海の拠点を経由して制作される体制について、情報管理や安全保障上の審査を行ったのか。
  4. この契約に、県民と名古屋市民の税金がどれだけ充てられているのか。
  5. 再入札の落札者は単独の事業者か、共同体か。共同体であれば、その構成はどうなっているのか。

大会は10月4日に閉幕するが、公金の使い道への説明責任は閉幕とともに消えるものではない。回答があれば、本稿で紹介する。

出典

一次資料(組織委員会・OCA)

報道

前稿

資料の保全について

本稿の出典とした資料は、公開時点の内容を第三者のアーカイブサービスに保存した。組織委員会のサイトはすでに旧サイトへの移行が始まっており、大会の閉幕後に資料が整理される可能性がある。その場合でも、読者が本稿の公開時点の記載を確かめられるよう、以下にアーカイブへのリンクを記す。報道記事については、著作権に配慮し、全文の転載は行わずリンクのみを示す。

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